大阪からサンフランシスコの会社で働く:時差、非同期、夜の時間の守り方

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2026年9月30日更新

2021年11月から、サンフランシスコに本社があるVercelで、大阪からフルリモートで働いています。2024年からはアジア太平洋・日本のカスタマーサクセスチームのリードを務めていて、1日のうちに日本のお客様、アジア太平洋の同僚、そしてカリフォルニアの人たちとやりとりします。カリフォルニアの午後は、こちらの早朝です。

先に結論を書くと、サンフランシスコと実際に重なるのは大阪の朝の2時間ほどで、それも週4日だけです。それ以外はすべて文章で回す必要があります。しかも、私が寝ている間に読まれることを前提にした文章です。

時差の計算

日本は一年中UTC+9で、サマータイムがありません。サンフランシスコは太平洋時間で、冬はUTC-8(PST)、夏はUTC-7(PDT)です。日本の方が、冬は17時間、夏は16時間進んでいることになります。米国が時計を切り替えるのは3月の第2日曜日と11月の第1日曜日で、日本側は何も変わりません。

簡単な覚え方があります。大阪の時刻に8時間足して日付を1日戻すと、サンフランシスコの時刻になります(冬は7時間)。大阪の火曜9時は、夏ならサンフランシスコの月曜17時、冬なら月曜16時です。

大阪(JST) サンフランシスコ 3月〜11月(PDT) サンフランシスコ 11月〜3月(PST)
火 7:00 月 15:00 月 14:00
火 9:00 月 17:00 月 16:00
火 10:00 月 18:00 月 17:00
火 18:00 火 2:00 火 1:00
火 23:00 火 7:00 火 6:00
水 1:00 火 9:00 火 8:00

つまり、使える時間帯はこうなります。

  • 大阪の早朝=サンフランシスコの午後。 だいたい大阪の7時〜10時です。本社との会議は、ほぼすべてここに入ります。
  • 大阪の深夜=サンフランシスコの午前。 大阪の1時ごろからです。ローンチや障害対応など、待てないものだけにします。
  • 大阪の夜は、カリフォルニアの真夜中です。本社から何か頼まれることはまずない時間帯です。これは覚えておいて損はありません。

表からは見えないことが2つあります。ひとつは、週がずれていることです。大阪の月曜の朝は、サンフランシスコではまだ日曜の午後です。向こうの金曜の午後は、こちらの土曜の朝です。つまり重なる朝は火曜から金曜までの週4回で、5回ではありません。

もうひとつは、サンフランシスコ側のカレンダーで設定された定例会議が、年に2回、1時間ずれることです。太平洋時間15時の定例は、冬なら大阪の8時、3月からは7時になります。カレンダーは変換してくれますが、7時で大丈夫かどうかまでは聞いてくれません。米国の時計が切り替わる週は、予定を見直しておきましょう。

アジア太平洋の方は楽です。ソウルは日本と同じ時間、シンガポールは1時間遅れ、シドニーは向こうのサマータイム(10月〜4月)次第で1時間か2時間進んでいます。インドは3時間半遅れです。インドからシドニーまでをカバーする会議なら、日本の昼過ぎが狙い目です。大阪の13時は、インドの9時半、シンガポールの12時、シドニーの14時か15時にあたります。

非同期にするもの、会議にするもの

重なる時間が2時間ほどしかないと、会議は高くつきます。会議は、文章ではできないことのために取っておきましょう。私の目安はこうです。

基本は非同期にするもの:

  • 進捗の共有とフォーキャスト
  • 答えがひとつに決まる質問
  • ドキュメント、提案書、スライドのレビュー
  • 承認(1回の返信でOKと言えるだけの背景が書いてあれば)

会議にする価値があるもの:

  • 意見の対立。スレッドで3往復したら、4通目は会議の招待にします。
  • 人へのフィードバック。特に言いにくいもの。
  • 初めて一緒に仕事をする相手との最初の会話。一度話しておくと、その人のメッセージがずっと読みやすくなります。
  • お客様が関わる場面。役員向けのビジネスレビューや、お客様が不満を抱えているときなど。

会議にする場合でも、まず書きます。下書きについて話す会議は短く済みますが、下書きを作るための会議は長くなりますし、結局あとで誰かが文章にまとめることになります。

とはいえ、16時間の時差で働くことには、はっきりしたデメリットもあります。オフィスの立ち話で入ってくるような情報は届きませんし、サンフランシスコの会議で決まったことは要約で届くか、そもそも届かないこともあります。文章をきちんと書けば差は縮められますが、なくなるわけではありません。

非同期を回すための書き方

私の1日が終わる頃、サンフランシスコは真夜中です。向こうの1日が終わる頃、こちらはまだ午前中です。残したものは私が寝ている間に読まれるので、それだけで通じるように書く必要があります。

引き継ぎ

引き継ぎのメモは、相手が何も聞き返さずに動ける内容にします。おすすめの形式はこちらです(本社向けなら、もちろん英語で書きます)。

引き継ぎ:[顧客名またはプロジェクト名]、火 18:00 JST / 火 02:00 PDT
状況:今どこまで進んでいるか(2行で)
決定事項:決まったこと(蒸し返さないために)
お願いしたいこと:誰に、何を、いつまでに(相手のタイムゾーンで)
返事がなかった場合:私が何を、いつするか
リンク:スレッド、ドキュメント、チケット

一番効くのは、最後の2行です。「返事がなければ、木曜の朝に日本語版をお客様に送ります」と書いておけば、1日を無駄にしかねない質問が、反対の人だけが返信すればいい「デフォルト」に変わります。

決定ドキュメント

もっと大きな話なら、短い決定ドキュメントを書きます。中身は背景、選択肢、自分の推奨案、そして誰がいつまでに決めるか。抜けがちなのが推奨案ですが、時差がある相手とのやりとりでは、ここが一番大事です。推奨案があれば、16時間離れた相手でも1回の返信で承認できます。推奨のない選択肢の一覧だと、1往復ごとに丸1日かかります。

細かい習慣

  • 1行目に依頼を書く
  • 時刻には必ずタイムゾーンを添える。例:「木曜10:00 JST(水曜18:00 PDT)」
  • 「明日」や「今日中(EOD)」は使わない。サンフランシスコで月曜の午後に言う「明日」は火曜のことですが、こちらはもう火曜なので、「明日」は水曜に聞こえてしまいます
  • 要約するより、元のドキュメントにリンクする。ドキュメントは更新されますが、要約は更新されません

夜の時間を守る

時差を考えると、つい、いつでも対応したくなります。サンフランシスコは大阪の1時か2時には動き出すので、誰かしら起きています。そして夜中の0時に返信すると、「この人は0時でも返信してくれる」と覚えられてしまいます。

それに、私には予定が決まっている夜もあります。2024年7月から、仲林圭プロのYouTubeチャンネルでMリーグの英語同時通訳配信をしているからです。仲林プロが日本語で解説し、私がそれをリアルタイムで英語に通訳します。Mリーグの対局は夜で、生配信の通訳中にSlackを見る余裕はありません。そういう夜は、お客様との会議と同じようにカレンダーを押さえておきます。

同じような立場の方へのおすすめです。

  • 勤務時間を、カレンダーとチャットのプロフィールに、両方のタイムゾーンで書いておく
  • 必要な夜はブロックし、理由も見えるようにしておく(「配信」で十分です)
  • 夜中でも対応すべきことを、上司とすり合わせておく。お客様の本番障害やローンチなどです。それ以外は朝の時間帯まで待ってもらう
  • 夜中に対応したら、翌日その分の時間を取り戻す

そもそも日本の日中は、日本のお客様とアジア太平洋のための時間です。そこを文章で済んだはずの本社との会議に使っていると、日本の1日とアメリカの1日を両方働くはめになります。

作業環境について少しだけ

特別なものはありません。MacBook Pro(M1 Max)、KVMスイッチでつないだモニター2台、何年もお客様との打ち合わせや社内ミーティング、配信で使ってきたロジクールのWebカメラ、そして自作のClaudeベースのアシスタントを動かしているMac miniです。一覧はUsesのページにあります。重なる時間のほとんどがビデオ会議なら、何よりもまず、カメラと安定した回線にお金をかけるのがおすすめです。

この仕事のもう半分、日本のお客様の事情を本社に説明する話は、稟議や4月始まりの年度予算を、米国本社にどう説明するかに書きました。

次に締め切りを書くときは、タイムゾーンも添えてみてください。

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